三弦ギターのクリスマスソング

地下街の人通りの多い道バタに
段ボールを弾いて 坐りこんだ、
6才になる娘とふたりで
温かいスープを求めた

この冬はとくに寒く
貧しさに寒さは大敵だった
わたし達は 
暖かな土地を目指そうとした

かき鳴らし唄いつづけたギターの弦は
今は三本しかのこってなかた
弦を買うお金もなければ、
温かいミルクを買うお金すらない
この冬は
布切れのような毛布一枚と、
誰かがすてていた
女物のダウンジャケットを
巻き付けて過ごした。

なんでこんな暮らしになったのか、
振り返りたくも思い出したくもなかった
でも、
あの日を境にわたしは全てを失い。
転落したのだ、

それまでのわたしは仕事も順調で
色々な方に信用されるような立場になり
沢山の仕事を任されるようにもなり
収入も周りの人達よりも沢山もらい
家族との団欒がわたしの生きがいだった。
娘はわたしを頼りこの世の全てを
任せきっているようなおもいでいた
わたしも娘の成長を妻と喜びながら
とくに
酒を浴びるわけでもなく、
金に狂ったような生活をしてるわけでもなく
つつましげな生活の中で、
常によの中を憂い
自らを呈して何ができるかを考えているような
人間だった。

ある日 わたしは車を走らせていた、
いつも安全運転を心がけていたが、
いきなり飛び出してきた、
若い主婦の自転車
がわたしの車めがけて突っ込んできた。

よろめき倒れた
その後ろにはまだ小さなこどもを
のせていたこどもは頭を打ち、
まもなく亡くなった。

この主婦はかなりのスピードをだしており
よそ見をしていたにもかかわらずに、

わたしを責め続け犯罪者のように仕立てた
ありえないことだが、でっち上げられたのだ
わたしはその日から
全ての信用をなくした
そしてわたしの精神がむしばまれていったのだ

世間の信用を勝ちとるのは時間がかかるが、
なくすのはあっというまで、
会社は辞める事になり
妻は娘を置いて出ていき
何もなくなったわたしは娘とふたり

ブルースは物言えぬ悲しみに
よりそう唄だ
ブルースは理不尽極まる怒りを
受け止める唄だ

ブルースをうたいたいのではなく
歌わなくてはならない事情がある

ブルースに取り憑かれたときに
この地獄が帰る家になる
ブルースの霊が僕にやどれば
あの人達の祈りのような恨みが
僕をつたってはなたれる

宿無しのブルースは
3弦もあれば充分だ、
一番太い弦で 自分を慰めて
残りの弦で世間に
弾かれた痛みを奏でる

今日はクリスマス
3弦ギターで娘が踊り
ギターケースに小銭が入った

二人で安くなっていたチキンを
かった、
今日はクリスマス
僕はサンタさんに、あの日々にもどりたいと
願ったそしてギターケース枕に
娘を抱きしめて眠った

善念

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