殺戮という言葉が

殺戮という言葉が
夜汽車に乗せられて
深い山のふもとについ

死んだという噂が
夜汽車に揺られ
平和な町までやってくる

みんな耳をふさぎ
眼をふさぎ
鼻をつまむ
口は無駄を語る

明日の朝食は 鶏肉だ
彼が引き裂いた鶏肉だ
頭は鍋から はみ出ている
舌刷りして待つ 貴婦人たちは

ヨーロッパの家具に囲まれて
幸せを 絵画にしたような
コーヒーカップに
血の涙が注がれる

醜いという言葉が 
夜汽車に揺られ
白鳥のいる湖までつく

淫らという言葉が
夜汽車に揺られ
星空の落ちた丘につく

みんな耳をふさぎ
眼をふさぎ
鼻をつまむ
口は無駄を語る

朝もやの森に隠れている
野兎の親子を硬い石で打ち
熱い鍋に放り込む
舌刷りしているのは
靴のピカピカな ひげの紳士

木々のはざまのロッキングチェアー
やさしさが刻まれた 老人の微笑み
そのコーヒカップに
血の涙が注がれていく

 善念

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